第56回 江戸の怪談サロン

前回に引き続き、『続向燈吐話』(写本・元文五年<一七四〇>序)を中心にして、江戸の街中で語られた怪談の様相を検証した。

まず、巻九の十六「丹波国傀儡の霊の事」、巻十の七「女髪の怪異の事」をとりあげた。前者は人形・人形遣いの怪談、後者は正体不明の影に襲われ女の髪が跡に残っていた、というもの。それぞれが、どこかしら他の江戸怪談との通路を有しており、さらなる検証が臨まれる。なお、百物語の館の台本の元ネタである(まだ実際に舞台にあげられてはいないが……)。

続いて、巻十の一「駿河国藤枝山中、件出る事」の「件(くだん)」、巻十の二「相模国木場妖怪の事」および巻十の三「陸奥国さとりの事」の「覚り(さとり)」といった、山の化け物(妖怪)にまつわる話を検討した。これらは、前の話が次の話を呼び寄せるように連なっており、怪談語りの現場を想起させる。また、「さとり」のように同様の化け物の話でも、伝承地によって異なる話柄であることと、それらが同一の場で語られていたことが確認され、そのことの意義を議論した。

上記の資料を受けて、江戸の怪談サロンとしても注目される狂歌壇で詠まれた「さとり」もとりあげた。平秩東作編『狂歌百鬼夜狂』(天明五年<一七八五>刊)の一首と、天明老人編『狂歌百物語』八編(嘉永六年<一八五三>刊)に掲載された数首である。これらには、狂歌という知的で愉快な言語遊戯の化け物の世界が展開している。その解釈や世界観をめぐる議論が展開された。

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開催日:2020年09月12日

会場(もしくはzoomミーティングID):ミーティングID 996 9469 8546 pass 894431

発表者:門脇大

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