第87回 鎌倉怪談巡礼 其之Ⅰ

怪談は土地との深いつながりを持つ。とくに古典怪談においては。自明の事で柄ではあるが、フィールド情報との関連は一つ一つ確かめる必要がある。そのような趣旨で以前(2019)京都を舞台とする江戸期の怪異譚を取り上げ、淡交社刊『京都怪談巡礼』のまとめ、またその中の何話かは怪談朗読団体・百物語の館の台本に仕立て上げている。
 今回は、鎌倉という土地に根付いた怪談の諸相をフィールド情報との対比によって浮き彫りにすることを試み、在地の民俗、芸能、伝承を探りつつ、鎌倉怪談の出来かたに注目する。具体的には以下の8か所について考えていく。
➀妙本寺の蛇苦止堂(じゃくしどう)、②海蔵寺と源能・殺生石伝説、③大巧寺の産女霊神、➃御霊神社と荒事歌舞伎、➄笹目の塔の辻伝説と良弁伝、⑥蛇が谷の因縁、⑦星の井の幽霊済度、⑧延命寺はだか地蔵開帳
今回は➄の塔の辻伝説を中心に、奈良東大寺の建立で名高い良弁の奇しき出生(幼児期に鷲にさらわれ高僧に育てられる)の説話が相模国に定着して鎌倉由比ガ浜の長寿伝説に変容するまでの経緯を考えた。次回以降もひき続き他の事例を取り上げて鎌倉怪談巡礼を完成させていく。

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開催日:2024年05月24日

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発表者:堤邦彦